息が詰まる部屋と、木のある中庭と、バイオフィリアという言葉
窓のない部屋に入ると、息が詰まります。
木のある中庭が見えるだけで、ほっとします。
その感覚には、名前がついています。
そうした感覚を、空間づくりの考え方として整理したものが「バイオフィリックデザイン」です。
ひとつの言葉の来歴
バイオフィリアは、「生命(bio)」と「愛(philia)」を合わせた言葉です。心理学者のエーリッヒ・フロムが1964年の著書『The Heart of Man』で用い、生物学者のエドワード・O・ウィルソンが1984年の著書『Biophilia』で、人には生き物や自然とつながろうとする傾向がある、という仮説として広めたとされています。
1984年は、病院の窓の外の木を調べたウルリッチの論文が、Science誌に載った年でもあります。
あくまで仮説で、すべての人に同じようにあてはまると言い切れるものではありません。それでも、建築や空間を考える人たちにとって、大きな手がかりになってきました。
十四の手がかり
観葉植物を置くだけの話ではありません。光、景色、素材、形、空間の構成まで、幅広い要素が含まれます。
広く参照されている整理の一つが、米国のTerrapin Bright Greenが2014年に公開した報告書「14 Patterns of Biophilic Design」です。ウィリアム・ブラウニング、キャサリン・ライアン、ジョセフ・クランシーの三人が、500以上の文献を調べ、自然を取り入れる方法を14のパターンにまとめました。
パターンは「空間の中の自然」「自然を連想させるもの」「空間の性格」の三つに分けられ、それぞれに、根拠の強さが最大三つの星で示されています。「自然の視覚的なつながり」は、その最高の星三つです。
窓のない部屋で
検査室、治療室、待合室、病室。医療や福祉の空間には、窓を設けにくい、植物を置きにくい、工期が限られる、といった事情があります。
14のパターンは、全部を一度に取り入れるものではありません。その場所に合うものを選ぶための手がかりです。
そして、星三つの「自然の視覚的なつながり」は、窓のない部屋でいちばん足りなくなります。
Sky Factoryは、天井や壁に空や自然の景観を取り入れ、閉鎖的な空間の閉塞感をやわらげます。高解像度の写真を画像パネルにして、LEDで照らす製品です。
その空の下で患者さんがどう過ごしたかを調べた研究は、次の記事に書きました。
- 製品の特徴:Sky Factory Japan 公式サイト
- あわせて読む:天井を見上げる人と、四十年前の窓
- 出典:Browning ほか 2014(Terrapin Bright Green)/「バイオフィリア」の語の由来(Wikipedia)